一番槍の誉れ

一番槍(いちばんやり)とは、を用いて交戦の口火を切る軍団もしくは個人のこと。主に戦国時代の合戦で用いられた言葉であるが、現代社会においても最初に手柄をあげた人の事を指す。

2017.10.22.14.39.17フリート戦の一番槍といえばなんだろうか。

私はTacklerだと思う。相手を倒す為には相手の船が逃げれないよう、その場所に留めておかなければならない。戦いの火蓋を切るのはいつだってTacklerだ。

10/22の21:00頃、私はJitaからIkoskioに向かっていた。

「FGでPvPしようぜ、カイトね」

そう誘ってくれたのは、うちのCEOとNightcapだ。暫くEVEを離れ、一週間ほど前に復帰した私に慣らしのPvPとして最適な誘いだった。Jitaに保管していたFGに乗り、ゲートからゲートへの退屈なワープを繰り返している時、緊急コールが鳴った。

「面白い話がきた」

 

いつだって面白い事は突然やってくる。

「Siege Green.が直通のnull穴見つけたらしくてさ、なんか狙いに行こうぜってさ」

Siege Green.といえば、韓国系のLowPvPアライアンスだ。日系の企業もいくつか参加している。敵対したこともあるし、共闘したこともある。馴染み深い人々だ。

「艦種は?」「Gilaだってさ」「Inty欲しいね」「リンクは?」「Logiやろー」「dictorもっと出そうぜ」

参加組が集まるTS3のルームに入ると、矢継ぎ早に指示と検討の声が聞こえた。フリートチャットがせわしなく流れ、艦種と詳細な装備が貼られていく。聞き逃さないよう耳を澄ます。

なんとなしに思った。

「(2アカ操作でdictorだそうかな…)」

それがこの日の運命を決めた。

 

2アカ操作でDPSとTacklerを操作する。まるでPvPが上手い奴みたいだと自分で自嘲する。未だにカイトすら出来ている自信がない。MODを起動する手が小刻みに震える。そんな奴が大それたもんだ、と。

EVEのPvPはいつもいつもそうだ。墜ちるたびに色々なものを突き付けてくる。あの手この手で損失を見せつけてくる。自分のZkill、ウォレットから消えたisk、無様なカプセラ姿に、焼け爛れた死体。

そのたびにいつも「あぁ、下手だな」「なんで上手くいかねぇんだろ」と。

いつだって儘ならない。

私はいつも「私がいなくてもなんとかなる」戦闘が嫌いだった。それでは戦っている意味がないじゃないか。私がいて、私の技術が求められていて、そういう戦闘を求めていた。

 

Siege Green.との集合地点に到着し、あちらのTSにも接続し、出港指示を待つのみの段階になって早くも後悔しはじめた。

出てきたdictorは6隻。その中の1人になった。60人近いフリートの中で重要な役割を担ってしまった。しかも、今回は身内だけのフリートではない。Siege Green.とそれに属するJP勢達がいる。

「見栄を張る場面を間違えた」「分相応にやればよかった」心の中で呟く。

そんな私の思いとは裏腹に、フリートの雰囲気は明るい。

これは私の持論だが、Killが生まれるフリートとハプニングが起こるフリートは、その前兆のようなものがあるように思う。後者のフリートは準備の段階や出だしで、ぐだる。

必要な船が足りないだとか、FITで揉めたり、買ってきた装備が足りなかったり。指示ミスや誤ジャンプもそうだ。

今回はその気配がない。嬉しい事だが、その時の私には死刑宣告のようだった。

SAMURAI側のフリートも皆リラックスし、時間まで雑談をしていた。「台風が凄いね」とか「選挙の人凄かった」とか。私も混じって談笑してはいたが、ずっと唇の震えが止まらなかった。

震える唇を意識しないよう馬鹿話をし続ける。定期的に深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせる。これは武者震いだと自分で、自分を誤魔化す。

「何か私のしょうもないミスで艦隊が全滅するかもしれない」

「Killできるはずの敵を逃すかもしれない」

ぐるぐると頭の中で繰り返す。

もう始めたばかりの頃とは違う。何が原因で逃げられ、墜とされてしまうのかが

ぼんやりとわかってしまうようになったから生まれる、恐怖。

数百人集まった艦隊ではないからこその、緊張。

私が心底求めた、私が必要とされる戦闘。

逃げ出したかった。「もっとdictorださない?」と責任分散を狙いたかった。頬を叩き気合を入れる。珈琲と煙草の過剰摂取で胃が痛い。胃酸が上がり吐き気がする。

気づけば、目標のWHの前に来ていた。

 

Siege Green.のFCが英語で指示をする。彼もアジア系だろうか、聞き取りやすい英語だった。

「目標のシステムがここだ。dictorとintyが先陣をきる。intelに報告され、逃げられる前に何か捕まえるんだ。フリートはあとから追う」

やったことのある方式だ。

違いがあるとすれば、自分のすぐ後ろにフリートがいないことだ。つまり到着まで、何が何でも相手を留めておかねばならない。目標のシステムまでの間に捕まってもダメだ。

「ok…3…2…1…」

心拍数が跳ね上がる。マウスを持つ手が震え、煙草を咥えた唇が小刻みに動く。

「go! jump! jump! jump!!」

跳ねるように指が動く。WHをくぐりぬける。ローカルに誰かいる。Dスキャンを回す。VNIだ。無視。狙うのは大物だ。

ゲートに即座にワープする。

既にintelに報告がいったはずだ。1秒のロスが致命的になる。

目標のシステムまでひたすら突き進む。

指示を聞き逃さないようフリート側のキャラを動かす。こちらも遅れれば迎撃に食われる。

そのとき左上に見覚えのあるロゴが見えた。嘘だろ…。よりにもよってここかよ…。

ローカルにも知っている名前が並び始める。

Caladrius Alliance

JP勢の中で恐らく最も人数が多いであろうNullアライアンス。永くNullで活動をし続けてきた老舗。

他のJP勢を圧倒するキャピタル数を誇っている。

 

失敗はできない。あれがSAMURAIのPvPerかよと思われてしまう。

それだけはできない。絶対にそれだけはできない。

 

自分が自分を追い込む。重圧がのしかかる。

目標のシステムに着いた。一番乗りしてしまった。

Dスキャンを回す。スキャン結果が映った瞬間、また後悔する。

3隻のRorqualが映った。映ってしまった。

これで言い訳はできない。

「システム着いたけどなんもいなかったー」「まじかよー」にはならない。

14AU以内に3隻、存在する。逃げられる訳にはいかない。

「Rorqual3!Rorqual3!」震える声で叫ぶ。即座にSAMURAIのFCがSiege Green.のFCに伝える。

後ろのフリートが勇み足になる。

すぐさまOreサイトにワープする。ハズレ。

またワープ。ハズレ。

他のdictorも次々ワープしている筈だ。

まだ誰も何も言わない。Dスキャンには映る。

3つ目のサイトにワープ。ハズレ。

次第に諦めの雰囲気が流れる。

「シタデルか?」「ワープ中か?」

 

最後の望みをかけてワープする。

 

 

いた。やっと見つけた。

 

 

サイトIDを叫ぶ。

同時にMWDをオーバーヒートさせRorqualに一気に近づく。

バブル発射。早すぎる。範囲外。

 

早く早く早く早く早く!!!

 

震えて他のボタンを巻き込みながら発射のボタンを押す。

 

かかった。

 

ポイントコールは絶叫に近かっただろう。

 

後続のdictorが続々と到着する。他のRorqualをバブルで囲む。

フリートから喜びの声が聞こえる。

逃さぬよう何重にもバブルを重ねる。必死にGila側を操作し、dictorを逃がす。

「dictor死ぬなよ!」という指示が遠くで聞こえる。

ミサイルとドローンでプライマリに攻撃し続ける。墜ちろ、墜ちろ、何か来る前にさっさと墜ちろ。そう願いながら撃つ。

2017.10.22.14.48.44

1隻目が墜ちた瞬間、身体が軽くなった。狭くなっていた視界が広がる。指先の震えが止まった。

まだ2隻は墜ちてない。それでも。

やってやったと思った。やっとPvPerになれた気がした。

大したことはないのだろう。Rorqualが捕まるなんて珍しくもない。毎週どこかでRorqualが墜ちていて、EVEでは日常なのだろう。そんなので喜ぶなんてと笑われるだろう。

知ったことか。俺が捕まえてやった!どうだみたか!と小躍りしたい気分だった。

 

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一番槍の誉れ。他のRorqualに撃つことすら忘れていたdictorに乗ったキャラのkillboardには、1隻しか載っていなかった。それでも、私はこのKillを忘れない。

私がPvPerになった、その証なのだ。

 

 

 

(多くのFUNをくれたSiege Green.またCaladrius Allianceの皆様どうもありがとうございました)

 

 

 

 

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